「次の時代が豊かになるようにつないでください。お金より人です。」人生フルーツ上映会
- 2023-02-08
- ひとのおと
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※こちらの記事に掲載している画像の一部は映画「人生フルーツ」に登場する映像です。
※画像の著作権はすべて東海テレビ放送に帰属します。
先日の土曜日、都内にて自主上映会を開催しました。
映画のタイトルは「人生フルーツ」
Vision Bridge Inc.大磯爵歌さん、Sincere PR 新田まゆこさんとともに、年末から企画していたのです。
この映画は2017年公開の作品。
愛知県春日井市高蔵寺ニュータウンに暮らす津端修一さん・英子さんご夫婦の暮らしを、2年間丁寧に追いかけたドキュメンタリーです。
公開から6年以上経ちますが、今なおリバイバルや自主上映でじわじわと広まり続けるというのですから、それだけでも普通の映画ではないということを感じていただけるのではないでしょうか。
驚くのはそこに描かれている多くのシーンが、お二人のごく普通の日常ということ。
手の込んだ演出もなければ、奇をてらったセリフもありません。むしろ、無言のシーンや「間」が多いようにも感じます。
けれど、樹木希林さんのナレーションに添って展開するお二人の丁寧な暮らしには、
人を思いやる心、仕事へ真剣に向き合う姿勢、ご夫婦の阿吽の呼吸が絶妙に映し出され、
ささやかな日常がどれだけ愛おしくかけがえのないものかを、切々と教えてくれるように思います。
果物や野菜が育つお庭を手入れする様子や、手料理を美味しそうに頬張る様子、英子さんが修一さんの髪を切る様子など。当たり前の景色が、鮮やかに飛び込んでくるのです。
ちなみに自主上映会を開催するのは、今回が初めてです。
当日を迎えるまでドキドキしていたのですが、たくさんの方がお集まりくださり、青山の路地裏にあるスペースにて無事に会がスタートしました。
上映中は全員がスクリーンに釘付けになっていました。
皆さんとても良いお顔をしていて、英子さんのチャーミングな振る舞いに、目を細める人がいると思えば、修一さんの常識はずれの発想に、口がぽかんと開いてしまっている方もいらっしゃった。
映画の後半では、会場全体に啜り泣きが聞こえる時間もありました。
人生フルーツという映画を一言で表すのは難しいですが、くるくると変わる皆さんの表情が、この映画の魅力を物語っているように思いました。
私がこの映画を観るのは今回で3回目。
観るたびに新鮮な気づきがあり、心が解放されていくような思いがします。
それもこの映画が多くの人に愛され、クチコミで広がり続ける理由なのかもしれません。
今回とても心に響いたのは次の言葉です。
「次の時代が豊かになるようにつないでください。お金より人です。」
津端夫妻が日々の暮らしを通して実践し続け、辿り着いた矜持のように思われました。
ご夫婦には若い頃から貯金がなかったようで、入ってきた給料は食材や生活費だけでなく、庭の畑や家具や器など、次世代に譲れる「良いもの」に費やしていたようです。
映画の中でこんなセリフを言うシーンがあります。
英子さん「結婚当初からお金はなかったねぇ」
修一さん「お金は… なかった、ねぇ」
順にぼそっぼそっと呟くのですが、そこに悲壮感は全くなく、二人してあっけらかんとした様子なのです。観ている側がふふっと笑ってしまうほど。
なぜ、こんなにもゆったりと構えていられるのでしょうか。
私なりに考えてみたのですが「時間がかかってもいいから自分の手でやる」ということにヒントがあるように思いました。
「自分でできることを何か見つけてコツコツやれば何か見えてくる」
というのは修一さんの教えで、内気だった英子さんもそれに従い、障子の張り替えから、編み物、機織り、刺繍、お料理まで、なんでも自分でこなせるようになっていきます。
そして、おそらくその最たるものが40年以上かけて育ててこられたお庭でしょう。70種類の野菜と50種類の果物が実るそうです。
自分の手でコツコツやる。そんな営みを通してお二人が見つけたのは、自分たちの中にある「生み出す力」だったのではないでしょうか。
自分の手で生み出すことができるという経験は、少なくともお二人の中に余裕を生んだに違いありません。
歳月を経る中で、お金はなくても何とかなるという体感を重ねながら、
暮らしに手をかけることや次の時代に思いを馳せることに、最上の喜びを見出していったのではないかと思うのです。
一方で、手を動かしてみるからこそ、自分たちではどうにもできないことがある、ということも深く知っていたように思います。
つまり、日々の生活を営んでいくために、人に頼らなければいけないことがある、ということをきちんと心得ていた。
だからこそ、お二人は何よりも「人」を大切にされていたのだと思うのです。
英子さんは1ヶ月に一度バスと電車を乗り継ぎ、名古屋市内にある魚屋さんに買い物にいきます。
先代からそのお店に通われていて、スーパーなど他の場所で魚を購入したことは一度もないそうです。
信用している人が仕入れてきた食材だから安心して購入できる。
その有り難さを思うからこそ、そのお店に通い続けるのでしょう。
また、その縁が世代を超えて豊かに続いていくことを、当たり前に願うのだと思います。
さらに素敵なのは、その後の修一さんの行動です。
購入した魚を英子さんが料理し、それを食べた修一さんは、毎回料理の絵を葉書に描き、お礼の言葉を添えて、魚屋さんに送るのだそうです。
「次の時代が豊かになるようにつないでください。お金より人です。」
その言葉を、日々の暮らしの中で示し続けたお二人の生き方に感服しました。
もっとも、津端夫妻の暮らしに羨望を抱いたからといって、すぐさま同じような生き方ができるかというと、そういうわけにもいきません。
まだまだ私は自分や家族のことでいっぱいいっぱいですし、お金というものを便利に使っている自分もいます。
ただそれでも、お二人の知恵を少しずつ取り入れ、自分の手でできることを増やし、次の世代につないでいけるものを育てながら、年齢を重ねていきたいものです。
今回の上映会ではワークショップの時間も設け、映画で感じたことや気づいたことをグループに分かれてシェアする時間を設けました。
映画の興奮冷めやらぬうちに発言していただいたのが良かったように思います。心の動きを誰かと共有できることはとても幸せなこと。いろんな視点のご感想をお聞きすることができ、とても楽しかったです。
この作品の醍醐味は、映画を観た時だけでなく、自分たちの生活に戻ってからも味わえるように思います。むしろ、後者の方が大きいかもしれない。
それぞれの心に残った言葉が、じわじわと思い起こされるはずなのです。
家は、暮らしの宝石箱でなくてはいけない。
ときをためて、ゆっくりと。
きちっとした物を着せ、きちっとした物を食べさせる。 そうして旦那がよくなれば、巡り巡って自分もよくなる。
美味しいねぇ。
そう言ってもらえたら本望です。
いいことだけ考えて。
悪いことは言わないの!
彼女は僕にとって最高のガールフレンド。
その方が僕はいいと思うなぁ。
自分でできることを何か見つけて、コツコツやれば何か見えてくる。
次の時代が豊かになるようにつないでください。お金より人です。
上映会にお越しくださった方の心の中に、何か大切なものが芽生え始めたとしたら、それほどに嬉しいことはありません。
とにかく無事に会を終えることができ安心しました。また機会があれば開催したいな。終わったばかりだけれど^^
かまくらのおと
白河晃子
人生フルーツ予告編。予告編もとても素晴らしいので是非ご覧になってみてください。
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