「母10年」

子どもの成長。特に男子の変化は突然やってくると聞いていたけれど、本当にその通りのようです。

小学生の長男が、私と一緒に近所を出歩いている最中に

「この辺り友だちいるからさ」

とパッと手を離すようになったのは、2ヶ月前のことでした。

見向きもせず颯爽と前を歩いていく長男。

その背中に「そっか…」と返事をするのが精一杯でした。

温もりが残る手のひらは、宙に浮いたまま。
 
普段はガミガミと怒っているのに、こんな時ばかり「もう少しだけ求めてほしい」と思ってしまうのはワガママなのかな…
 
けれど、恥ずかしいという気持ちを知った息子を手放しで喜べるほど、私はタフな母親ではなかったようです。
 
特別な時間が過ぎ去ってしまったことを不意に知らされ、道に咲く紫陽花がぼんやりと目に写りました。
 
きっとここからは、こんな光景に出くわす日が増えていくのでしょう。

でもだからこそ、目の前のいっときの愛おしいさが際立っていくのかもしれません。
 

 
一昨日、10歳の誕生日を迎えた長男。
 
誕生日プレゼントのリクエストにも意表をつかれました。
 
おもちゃでもなく、ゲームでもなく、なんと「自分の部屋」が欲しいと言うのです。
 
何度聞き直しても頑なにそう言うので、この週末は、お部屋と家具の大移動を行いました。(現在進行形)
 
「俺だって自分の部屋ないのに…」とつぶやく夫。

「私だってそうよ…」と答える私。笑

いつかは長男と弟に一人一部屋を、と想像して選んだ我が家の間取りではあるけれど、こんなにも早くその日が訪れるとは思いませんでした。

ということは、あげたばかりのこの部屋から息子が巣立っていく日も、実はそう遠くない未来なのでしょう。
 

 
20歳を大人とすれば、まさに今がターニングポイント。
 
成長とともに主張も増えつつあり、切ない思いをする日も、うまく折り合えない日も多くなってきましたが、そんな日でさえ、きっと振り返ってみれば互いの人生を豊かにしてくれる彩に他ならないのだと思います。
 
もちろん渦中にあってそんな流暢なことを思っている余裕は微塵もありませんが、そうであることを願っています。

長男が産まれた夏の日を、私はいまだに鮮明に覚えているけれど、子どもは止まることなく着実に前に進んでいく。

10年後は一体どんな姿で、どんな表情をしているのでしょう。

その日の彼に会えることを心から楽しみにしています。
 

かまくらのおと
白河晃子

(八幡さまへお参りへ行った後に境内のカフェでフレンチトーストをいただく長男は大の甘党…)

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