秋の夜

さっきまでの喧騒が
ウソのように静まり返った。

宵闇のリビングにひとり。

無造作に転がるゲーム機を横目に
ふぅーっと息をつく。

窓を開けると、夜の匂いをのせて、涼しい風が入ってきた。

途端に響いてくるのは、虫の声だ。

儚げな音色は繊細に響き、

幾重にも重なり合い、

星屑を散りばめたような世界を
私の中に浮かび上がらせる。


鎌倉に暮らしていて一番の贅沢は
そんな秋の夜かもしれない。

緊張していた身体は自ずとやわらぎ、思考は鎮まっていく。

都内に暮らしていたときに、こんな瞬間はあっただろうか。

大袈裟かもしれないけれど、
日々の雑多なことも、自分の未熟さも、
この瞬間にすべて許されてしまう、とさえ思うのだ。

残りの家事は、もういいか。

あまりに心地良く、つい夜更かしをしてしまう今日このごろ。

さぁ、明日も良い1日になりますように。

かまくらのおと
白河 晃子

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