夜は、スマホの電源を切る

最近、いやに寝覚めがよい。

もともと朝は弱くないが、いつにも増して、頭がスッキリとしているような気がするのだ。

ベッドの上で伸びをする身体もしなやかだ。
窓をあけると、ひんやりとした風が入ってくる。

今年は酷暑だったから、てっきり季節が変わったおかげかと思っていた。

しかし、ふと気づいたことがある。

数週間前から、スマホの電源を切って寝るようにしたのだ。

もしかすると、その影響ではないだろうか。

私はこれまで、スマホの電源はつけたまま寝ていた。

というのも、長い間、それを目覚ましがわりに使ってきたからだ。

「枕元にはスマホを置かない方がいい」という話はよく聞いていたが、かといって目覚ましがなくて起きられなくても困る。

そんな理由から、夜の間はスマホは頭から離れた位置に置く程度で、その影響をあえて深く考えずにここまできてしまっていた。

しかし、それをやめようと思う出来事が起きた。

迷惑メールである。

これまでも、時々そういったメールが集中的に届くことがあったが、しばらくすると止んでいた。

なので、特に対策をすることもなくほったらかしにしてきたのだが、8月の中頃からだろうか。それらのメールが、いよいよ止まらなくなってきたのである。

日中ならまだしも、真夜中まで、スマホの「ブブブブ」という振動音が鳴り止まない。

どんな環境でも寝ることができる(神経の図太い)私でさえ、これでは落ち着いて眠れない、ということで、ついにスマホの電源を切ることにしたのだった。

そうと決めると、目覚ましがない、なんてことは、何の問題でもないことに気づいた。

目覚まし時計を用意すれば良かったのである。

しかも、その気になるというのは不思議なもので、家の中から使われていない目覚まし時計が出てきて、あっさりと事足りてしまった。

そんなことで、夜寝ている間はスマホの電源を切るようになったのだが、
数週間がすぎた今、その副産物として寝覚めの変化に気づいたのだった。

なんだか軽い、なんだかスッキリしている。

言葉にしてしまうと、ただそれだけのことなのだが、それがどれだけ大事なことかは、自分の身体が一番よくわかっているように思う。

おそらく、夜中にスマホを完全に閉じたことで、小さな音や光、空間を行き来するたくさんの情報から解き放たれ、身体が熟睡できているのだろう。

心なしか、スマホ自体も調子がよくなった気がする。

逆に言えば、これまでどれほどの影響を受けてきたのだろうか・・・

夜中にその画面が光るたびに、私の中にも何かが入りこみ、蓄積されてきたに違いない。

スマホと身体のつながりは思った以上に深いようだ。

頭では分かっていたつもりだが、体でそう感じられた意味は、とても大きいと思う。

スマホの電源を切ることにして良かったもう一つの点は、朝の時間に余計な情報が入って来なくなったことだ。

余計な情報というのは、つまり、SNSやニュースやメールである。

朝の時間をそれらに費やしたくないと思っていても、画面に未読のアイコンが溜まっていれば、つい開きたくなってしまうものではないだろうか。

意志が弱いと言ってしまえばそれまでだが、ひとたび開いてしまえば、朝からやらなくてもいいことを、してしまう羽目になる。

特にメールは厄介で、それに手をつけてしまうと、朝の支度もそこそこに、もうその時点から否応無しに仕事が始まってしまうのである。

しかし、スマホの電源さえ入っていなければ、不用意にそれらの情報に触れる恐れもない。

すると、朝のルーティンだけに集中することができるので、やるべきことがテキパキと片付いていき、いつもより時間が余ったりするのだ。

そのように十分に朝の時間を過ごした上で、自分の意思でスマホの電源を入れる。

すると、その後の1日も快適に過ごせるような気がするから不思議なものだ。

夜スマホの電源を切ることで、1日の中で10時間ぐらいそれに触れていないことになるが、今のところなんの支障もない。むしろ、メリハリが生まれ、仕事が捗るような気がする。

これまでいかに無意識のうちに、昼夜問わず、スマホに細々と時間と心を割いてきたことだろう・・・

ひょんなことから、スマホとの付き合い方を見直すことになったが、この習慣はもう手放せないものになりそうだ。



かまくらのおと
白河 晃子

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